JICA草の根事業完了報告会を開きました

報告会の風景 モンゴル障がい児支援

 2019年12月19日にJICA東京事務所でJICA草の根事業完了報告会を開きました。ニンジンからは草の根チームの諸石(理学療法士)、野口(教員)、松本(保育士)、城(整形外科医)、鈴木(経理担当)と梅村(小児科医)が出席しました。フロアーにはニンジンの会員、医療関係者に加えて、JICAの他部署スタッフの参加もありました。

 2016年9月から2019年8月までの3年間、ウランバートル市のゲゲーレンセンターとサインナイズセンターに集う親子に、障害をもった子どもの育て方を教えました。理学療法士が脳性麻痺の子ども達に家族が家庭で毎日、リハビリを行う方法を教え、教員は子どもの力にあった算数の計算問題集を作成しました。2018年9月からは保育士が集団保育指導と家庭で使える手作り教材を紹介しました。

 モンゴル人の手で2つのセンターに集う親子のサポート体制をつくるために障害児親の会の親たち、療育関係者(理学療法士、教員、保育士、ボランティア等)や家庭病院の医師、看護師にセミナーを実施しました。

JICAからの1000万円の費用を使い、8回の渡航で実施したこの事業は、2017年秋から始めた草の根の日活動が、-30℃になる厳冬にも継続できたことが鍵となりました。心配だった冬季の暖房は各センターが行政やNGOの寄付で解決しました。

 毎週土曜日に親子が集って、療育・保育グループ、算数の学習グループに分かれて活動。草の根事業の現地補助員2人が、草の根の方法を伝えるパイプとなって月に1回参加して療育、教育の内容をサポートしたことが、力になりました。

 活動後は当番のお母さんが作ったランチを一緒に食べます。午後からは絵本の読み聞かせや自由遊び、昨年のクリスマスには愛読した「大きなかぶ」の劇を上演しました。大勢の登場人物が必要なので、皆が参加しました。日本にいる私たちは、ネット配信の動画を見ることができました。

 月に1回、食事をしながら親の集いを行い、お父さんたちも加わって、情報交換、子ども達も参加して、借りてきた騒音計で計って一番大きな声を出した勝者は商品がもらえる大声ゲームもあり、親睦を深めることができました。

 草の根の日以外の週日は、それぞれのセンターにボランティアが来て、スペシャルオリンピックスを目指してサッカー練習をして、台湾で開催された予選に出場を果たしました。事業が始まる前から来ていた子ども宮殿の先生が絵や工作の指導を継続しています。寒い冬でも暖かいセンターには近所の子ども達が自然に集まって、児童館のような活気のある毎日を過ごすようになりました。

2つのセンターの子ども達に関わる療育関係者を育て、広く療育の知識をモンゴル人に伝えるために、親の会セミナー(5回)、療育関係者セミナー(7回)、家庭医・看護師セミナー(5回)を開き、参加者からは「障害児を指導するための新しい知識をありがとう」「地方に来てぜひ、セミナーをして欲しい」など、好評を得ました。

 療育関係者が2センターの脳性麻痺の子どもたちに関わる場づくりを3年間、試行錯誤して来ました。モンゴルの理学療法士は2007年から養成が始まり、2018年に国家資格が与えられるようになり、数も少なく、小児リハビリはこれから本格的に取り組むところです。行政にも働きかけましたが資格のある理学療法士の派遣には至りませんでした。2018年10月から、モンゴル医科大学理学療法学科4年生の学生が、ボランティアとして草の根の日に訪問活動を行うようになり、2019年5月には修了証を授与しました。

 本事業のカウンターパートであるモンゴル障害児親の会本部のセレンゲ会長から「ニンジンプロジェクトは『この子は長生きしない』と諦めていた親が社会に参加できると気付かせる役割があった」との評価をもらいました。あるお母さんは2人の姉娘の下に障害のある女児を産んだ時「教育費は全て2人の姉に使おう」と思ったが、ニンジンの活動に参加して考えが変わったと言い、幼稚園から小学校に上がった末娘の将来に希望を持って育てています。

 モンゴル国は2016年に障害者権利法を制定し2020年の4年間で、障害児・者があらゆる場面で社会参加する施策に取り組み始めました。公立幼稚園への入園を義務付け、2019年秋からは公立小学校への入学を義務付けました。教育福祉へ回す予算が少ないため、実情は追いついていませんが「ウチの孫は幼稚園に入る権利がある」と、一人のおばあさんに相談された時に、モンゴル国の障害児・者を取り巻く風向きの変化を実感することができました。

 草の根プロジェクト終了後、2センターが草の根の日活動を継続できるように、ニンジンがランチの費用と月1回、療育に携わる人材派遣の謝金を負担して、支援を継続しています。学生ボランティアはセンター毎に決まったメンバーが定期的に訪問し、賑やかにセンター活動を盛り上げています。

(2019.12.25 梅村浄)

ニンジン草の根メンバー
左から、リーダーの梅村先生、諸石PT、野口先生、松本さん、城先生です。

報告会が終了し、草の根事業が本当に終了しました。皆さんお疲れ様でした。その後、ロビーで、簡単な「解散式」をして帰宅しました。

草の根解散式

コメント

タイトルとURLをコピーしました